この脱力感はなんだろう。
自分で言い出して、自分で区切りをつけたはずなのに。たった3年間という年月でしかないのに。どんなに好きな空間だったのか、自分自身に解っていなかったのだろうか。
どこかで、いつだったか、こんな感覚を体験したことがある。自分が直接、何かを失ったのではないのに、フィジカルな痛みや悔いは何もないのに、黙っていたら、じんわり沁みてくるような孤独感。
マリフドットコムを立ち上げた。3年前。五里霧中だった。人が集った。貴い接点を誰もが思って、そこを通り抜けていった。たくさんの人に出逢った。
バーチャルとリアルの狭間で機能する空間として誕生し、いろいろなイベント、様々な出来事を経験して過ごした3年間だった。
立ち上げから間もなく、ウェブページが必要となった。仲間はみな手一杯で、プロデュースを行う自らが制作にあたった。イベントを企画し、運営して、監督、主演を同時に行った。ほとんど眠る時間を失い、暮らしの軸がマリフドットコムに傾いた。
毎日、来る日も来る日も必ず通った。雨漏りがするといって屋根へ登った。ネコがいるといって屋根裏へ潜入した。ウェブ、デザイン、書き物、コンピュータ、商売、人、持てるスキルを惜しみなく注いだ。すべて無償のアクションだった。
そして時代が過ぎていった。
役割を果たしてマリフドットコムは幕を下ろした。
店の中を片づけるために資料を整理していると、走馬燈の絵のように、断片的なシーンが蘇った。成功もあったし、失敗もあった。絶賛され、批判を受け、一緒にいた人はみな何かを得て成長したにちがいない。
最後にウェブページへ閉幕を告げたとき、そこはかとなく何かに似通った淋しさがこみ上げてきた。あたりまえのように一緒に過ごした恋人と別れたときと同じだ。
マリフドットコムは恋人だったのかも知れないな。そして、出逢ったたくさんの人がみな、恋人だったんだ。
いまは、ただ感謝だけ。
ありがとう、みんな。
(文・ふじたのぶお)
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