「あたたかいカキ雑炊はいかがですか」と威勢の良いかけ声が響く。さほど広くない商店街の中ほどには机が出され、道の両脇に屋台が並び、通りはカキを焼く香ばしい匂いにつつまれた。
年に一度の恒例催事。玖波漁業カキ生産者組合が主催した「マリフカキまつり」の一幕。
新鮮な旬のカキが賞味できるとあって、毎年たくさんの人々で賑わいをみせる中通り商店街の一日だ。今年は真冬並の寒さが戻ったが、ホクホクのカキと白い吐息をたずさえて立ち歩く人に埋め尽くされた。千人、いや千五百人、それは見事な活気である。
夏の夜市、冬のクリスマス催事とならぶ商店街の三大イベントは、それぞれ早くから準備にとりかかる。企画が練られ、商店主たちの持ち場や、来場される市民へのサービスが検討される。協賛先との交渉がなされ、多くの人や団体が参画して、ともに話し合いを進める。
日々に商いを営む者にとって、こうした催事のための活動は必ずしも安易なものごとではないが、開催当日の賑わいを思って皆、とても嬉しそうに時間と労力を費やすのだ。実に頼もしい。
さびれたと言われる駅前でも、集うための愉快なきっかけがあれば、短時間に千人単位の人々で充たされ、街で満足を得ることができる。面目躍如。これこそがいまでも潜在的に持っている街の力。目まぐるしく変化する現代人の生活様式の中でも、やり方次第、商店街は十分に活躍できるのである。
さて、今夜は屋台で買った小さなカキと酒で余韻を楽しむとするか。いや、その前に、中通り商店街へお越しいただいたみなさまへ。たくさんのご来場をありがとうございました。
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