ふじたのぶおの駅前コラム ウェブ版
防長新聞(水曜日)へ連載している「ふじたのぶおの駅前コラム」を掲載しています。




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2004/2/11

物と事と街

 日が暮れて夜になると、看板やアーケードが明るく街を照らし出す。どこか安心を感じるせいか人々は、暗い夜道を歩くより店々が軒を連ねる商店街へと足を向ける。あまり変わり映えしないけれど、いろいろな目的をもって、やはり人は駅前を歩く。

 岩国の駅前は、どこの土地でも見かける地方都市の典型的な姿といって良いだろう。駅を起点に道路が広がり、商店街が隣接する。様々な専門店が混在し、大型の量販店もあれば、駐車場も各所で営まれている。

 しかし商店街の中程にはシャッターに閉ざされた空き店舗が目立つ。その光景を見て「駅前は寂れたねえ」とだれもが口にする。

 急速な過疎化によって周辺人口が少なくなったのではなく、マンションの建設などで駅前界隈で暮らす人は、むしろ増えているように思えるが、依然として斜陽は深まるばかり。なぜだろうか。

 情報だ。かつて栄華を誇っていた頃、暮らしに必要なネタは人が集う駅前を介して伝搬された。けれどもテレビや新聞、雑誌などの情報メディアが成長した現代では、街へ行かなくても膨大な量の情報が生活の中に流れている。さらにはインターネットが普及して、もっと個人的な情報でさえ、ダイレクトに受け渡しされる世の中になった。

 現代人は「物」ではなく「事」を求めている。人々にとって、より上質な情報を取りそろえる事こそ、街や店のバロメーターを上げる秘訣なのである。

 まもなくバレンタイン。暮らし中のイベントを楽しむ「事」のために、駅前は注目されている。それともバレンタインには、何がなんでもチョコレートという「物」が食べたいのかな。


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