明け方。かすかな潤いを含んだ空気が漂う中で、次第に街が目覚める。通勤を急ぐ人の群が通りすぎ、あちらこちらで店のシャッターが開いて、掃除や打ち水のざわめきが合図となって駅前の一日は始まる。やがて人や車の往来は増し、賑わいが訪れる。
楽しげな笑顔が交わされる一方で、実のところ街には事件や事故も絶えない。
疲れた人々は苛立ち、ささいな物事が諍いになってしまうことだってある。公共物が壊されたり、善意が無惨に踏みにじられることなど、決して珍しくない。街には仕方なく光と陰が同居しているのだ。
街づくりを考えるとき、どんな話し合いでも多くは、発展を目指して次の一歩を模索する。新しいビルを建ててはどうか。イベントを開催してみてはどうか、と実践することによって、さらに活力を得るよう皆は願ってやまない。
たしかに前進することは必要なのだけれど、街づくりの基盤を固めることも忘れてはならない。「街の安全や安心は、良い街づくりの必須条件に他ならない」と今、勇士が集い、駅前一円で話し合われている。ボランティアを組織し、街の住人と警察や当局が連携して、街の治安を自分たちの手で形にしようというのである。
これは、とても頼もしいことだ。安心な街にこそ、本当の賑わいが生まれるのではないだろうか。
時を過ごし夜の顔となった街は、眩しいネオンが役目を果たすと、ようやく長い一日が終わって眠りに就く。しばしの静寂を経て、たった数時間後にはまた次の日が始まる。街で安心が感じられたら、きっと駅前の朝は、もっと清々しい。
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