佐世保で営んでいた文具店をやめることになった主婦の思いが、新聞の片隅にあった。経営が立ちゆかなくなり、悩み苦しんだ果てに出てきた答えは、「未来に夢を持って追いかけよう。」だったと言う。
商売を営む者にとって日々の売り上げやお店の採算は、自身の生活に直結する重大なことだ。生業(なりわい)とは良くできた言葉で、文字通り生きるための業。何をさしおいても、これが無くては生活ができないから困る。
街にあって、小さなお店を営む者の中には、振り返ってみると夢を抱いて店を開いた人も多い。
好きな品物を並べ、街ゆくお客さんとあいさつを交わし、お互いの信頼を愛おしみつつ、まっとうな商いに精を出していた日々。毎朝、早起きをしてがんばる店先の掃除や、休日返上の仕事振りをして、働き者と言われたことも決して少なくないだろう。
それはみな商売に夢を持ち、自分の理想の姿に思いを馳せていたから、苦労を苦労と感じることもなく、いつも元気に「いらっしゃいませ」と笑顔になっていたのではないだろうか。
そんな商人がいつしか夢を忘れ、お店を生活の手段と思ってしまうと、街は活力を失っていく。自分の店に夢をみ、街に夢を創ることができたら、きっとまた笑顔が弾むにちがいない。
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