街の眺めは、意外と早く目に馴染むようだ。
ニチイという名の大きなビルが解体され、YMCAとなった。岩国駅を降り立って見る風景も、一年前には無かった建物さえ、いまはその存在を当然のように感じている。昔の風景がどんなだったかなんて、暮らしの中では、さほど重要なことではないのかもしれない。
駅前に有楽町通りと呼ぶ道筋がある。飲食店やブティックが軒を連ねる、郵便局の裏側の道。
つい最近までアーケード街の近くには、広告看板が取り付けられたアーチ型の街路灯が設置され、道行く人々に明かりと情報を提供していたのだが、これが十四本のシンプルな街路灯に交換されたのである。
駅前で鬼ごっこをしていた時代からあった看板だけに、工事の直後は、思い出を持って行かれたようで、それはとても寂しく思えた。
さきごろの新聞記事に、あわや事故となりかけた街灯倒壊の報道があった。広告スポンサーの不足に泣き、老朽化が分かっていながら手の打ちようが無い様を伝える記事が、昨今の景気を物語っているようで、ほとんど他人事ではない。
そんな駅前の風景だが、たいした月日も経ていないのに今ではすっかり見慣れてしまい、明るく照らされる街の姿に安心を感じている。些細なできごとでも、きっと街の息吹となって未来を育んでいるにちがいない。
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